「クチミミ」は、朗読(reading)の可能性を、実践を通じて確認する、有志による公演企画です。
ことばのことを考えています。
ことばだけでは創れないけれど、ことばを無視しても創れないので、ことばを素敵に出し入れする方法を考えています。
台本 → 演出家 → 語り手 → 聞き手
と、ことばが渡るとき、いったいどこで誰が何をしているのか?
色々と、わからないことがあるのです。
そこで。
小さなカフェで小さなお話しをします。
わからない時は、まずはシンプルに小さく始めてみるのがいいかと思うのです。
三人がそれぞれ短いお話を用意して、ひとりの女優に託してみます。20分が3つで合計1時間程度の小さな催しです。ことばを、読んだり読まなかったり語ったり語らなかったり話したり話さなかったり演じたり演じなかったりします。
お茶とケーキの美味しいカフェ、dropさんが場所を提供して下さいました。
あと、ここには、お話を聞く人が必要です。皆様のご来場を心よりお待ちしております。
遠い、海の果てに。
世の中の人達からついうっかり忘れられた小さな王国がありました。
世の中のひとたちは、普段は、王国のことなどすっかり忘れていて、
自分のことや自分以外のもののことを考えたり考えなかったりしているのですが、
時々、ふとしたはずみに、
「そういえば。そんな王国があったっけ。」と、思い出すのでした。
思い出すと、なんだか幸せな気持ちになりました。
幸せな気持ちになると、いろんなことに挑戦してみたくなりました。
なので、どんどん忙しくなりました。
そうしていつのまにか、王国のことは忘れてしまっているのでした。
そういうわけで、
王国のことを誰もが知っていましたが、王国については誰も何も知りませんでした。
******
本のタイトルは「王国」といいます。
ですので、これはきっと「王国」についての物語です。
物語の主人公は、王国の研究をしている、若い学者の卵です。
1章の終わりで、主人公は王国を探す旅に出ます。
そして、2章、3章、4章、5章、6章、7章、8章…と旅を続けます。
未公開作品「王国」世界初公開。
ドラゴンクエストを彷彿とさせる、ダイナミックファンタジーアドベンチャー(?)
作者は久野那美、読み手は片桐慎和子です。
僕は「コールスロー」という作品を上演します。本作は数年前「白い紙もスッキリしていて良いけれど、何か模様みたいなものでもあった方が寂しくないかな」ぐらいの気持ちで、知人が主宰する文芸同人誌に小説というテイで殴り書き捨て、踏み読み切られたもの。それっきり存在を忘れていたけど、今公演にあたって手持ちの文を片っ端から読み上げたら、意外にもこれが一番面白かった。まさかと思い、本文に少々手直しを加えた途端、今にもスウェーデンアカデミーからノーベル文学賞緊急受賞の電報が届きそうな傑作に仕上がった。朗読には様々な効{果/用}があると思うけれど、こうした再発見もその一つ。それが妄想か否かは、片桐さんのクチとお客様のミミで判定していただきたく。
物語はあくまでもつくられたものです。現存する素材が人間によって編集されて生まれたものです。そして、物語を語るということは、つくられた物語の現存化です。つまり、物語が生まれることとそれを読むことは、次元が違います。で、今回の朗読では、朗読者がリアルタイムで素材を編集し、物語がつくられる瞬間に近いニュアンスを現存化できるか、という試みです。
クチミミ : kmm@kiwamari.org